少子高齢化社会の日本では今、若者のみならず高齢者の一人暮らしが年々増えています。そしてゴミ屋敷の件数も増加傾向にあるのです。
ゴミ屋敷はゴミを溜め込むだけでなく悪臭や害虫を引き寄せるうえ、近隣や家族との関係性をも悪化させる恐れがあります。そして、最悪の場合は孤独死を招く危険な状態です。
この記事では、ゴミ屋敷と孤立化の関係性、ゴミ屋敷にならないためにできることを、様々なゴミ屋敷の片付けに携わってきた関西クリーンサービスが解説します。
高齢者とゴミ屋敷の関係はこちらの調査レポートをご覧ください
理解されにくいゴミ屋敷住人の気持ちや状態
誰しも初めからゴミ屋敷にしようと思ったわけではありません。ゴミ屋敷住人の中には、会社では通常と何ら変わらない社会生活を送っている人も多くいます。
では、いったいなぜ…?私たちが片付けや清掃の依頼を受けていて感じた、ゴミ屋敷住人の気持ちや状態には次のような特徴がありました。
・もったいなくて物を捨てられない
・片付ける気力を失っている
ひとつ目の「もったいなくて物を捨てられない」のは、特に戦後の物資が少ない状況を生きてきた高齢の方に多くみられる特徴ですが、その他、ため込み症を抱えている人も同様です。まだ使えるから捨てるのはもったいないという心理から、ものを捨てる行為を躊躇います。家族が不要なものを処分しようとしても「捨ててはだめ」と注意するのです。
ふたつ目の「片付ける気力を失っている」状態は、20代~50代の現役世代にも多く見られます。社会の中での役割は果たしつつも、自分のこと、とりわけ自分の生活環境を整える基本的なことに関しては気力を失い、片づけなない状態が続いてゴミ屋敷となってしまうのです。そのため、周囲は単なる怠けから起こるものだと判断しがちで、理解されにくい状態といえます。
どちらのケースでもゴミが溜まった室内で生活することに慣れてしまい、自分自身ではその異常さに気づいていないということも少なくありません。そのため周囲の働きかけや、外的なきっかけが無ければゴミ屋敷を片づける意識にはならないのです。
ゴミ屋敷の現状と本当の原因。セルフネグレクト状態の高齢者は全国に推定約1万人
ゴミを溜めてしまう人の中には自己放任を意味するセルフネグレクトに陥っている人もいます。
セルフネグレクトとは、自分自身に関心を持てなくなり、生活が維持できなくなっても周囲に助けを求めない状態です。入浴や食事などの最低限の活動もしなくなり、最終的には死を迎えてしまうこともあります。
内閣府「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査」では、セルフネグレクトと考えられる高齢者は全国に推定1万人以上いると算出されました。
ネグレクト状態にある高齢者の家の中の状態を5段階で表した結果では、一番状態の悪い「5」の事例が最多であることからもわかるように、セルフネグレクトとゴミ屋敷は密接に関係しています。
参考:内閣府 セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11539153/www.esri.go.jp/jp/prj/hou/hou060/hou60_03a.pdf
一方、弊社が2022年に実施した「ゴミ屋敷予備軍に関する調査」では、ゴミを溜めてしまうことは、面倒くさがったり、物が捨てられないといった性格面の特徴がある他に、仕事の忙しさやストレス、環境の変化など誰にでも起こりうるきっかけから生まれていることがわかりました。
この調査は片付けに悩んだ経験がある人を対象におこなったもので、一度ゴミ屋敷予備軍となってしまった人は、86%の割合で今でも片付けに悩んでいる結果も出ています。
ゴミ屋敷を何らかの方法で片づけたとしても片付けに対する意識を変えることは困難です。ゴミ屋敷の根本の解決の難しさをが伺えました。
引用:関西クリーンサービス ゴミ屋敷予備軍に関する調査
ゴミ屋敷になったことで生まれる孤立の問題
ゴミ屋敷になったことで、住人を苦しめるのが「孤立」です。
ゴミ屋敷は環境衛生を悪化させ、環境衛生の悪化は精神面にも悪影響を及ぼします。負の連鎖をもたらすゴミ屋敷。その住人が抱える「孤立」の問題とはいったい何なのでしょうか。
次の3つの視点で解説します。
・部屋に人を呼べなくなる
・周辺住民や家族との軋轢
・他人との関わりを避けるようになる
部屋に人を呼べなくなる
先に述べたとおり、ゴミ屋敷住人の中にも会社では通常と何ら変わらない社会生活を送っている人が多くいます。弊社に来る依頼にも、周囲にゴミ屋敷状態だと知られたくない、バレないようにしてほしいという相談は少なくありません。例えアパートの隣人であっても、親友であっても。
部屋に人を呼ぶことができず私生活を隠すようになると、周りにはとっつきにくい印象を与えることもあるでしょう。また「こんな汚い家に住んでいる私なんて」と自己否定に陥ってしまう恐れもあります。
周辺住民や家族との軋轢
ゴミを溜め込むことで悪臭や害虫が発生することがあります。周辺住民にも影響を及ぼすと、苦情が寄せられ、関係性を悪化させることになるでしょう。
さらに本人が対処できない(しない)ケースでは、家族や連帯保証人にもその責任が及びます。家族は最初のうちは仕方ない、と協力するかもしれません。しかし本人に全く片づける意思が無ければ良い顔はせず、次第に軋轢が生まれることは否めません。
身近な人との関係に距離を取るようになれば、ゴミ屋敷の住人は孤立してしまうのです。
他人との関わりを避けるようになる
衛生環境が悪くなると、精神面にも大きな悪影響を与えます。
最初は小さなきっかけでゴミを捨てられなくなったのかもしれません。しかし環境衛生の悪化から健康状態が悪化する負のループから抜け出せなくなると、いつしか「不安」や「孤独感」に追い込まれ他人との関わりすら避けるように。
連鎖の始まりが環境面か精神面かは人それぞれ違いはありますが、ゴミ屋敷はひきこもり状態を生み出す可能性も持ち合わせているのです。
ゴミ屋敷になる前に自分でできること
一度ゴミ屋敷になるとなかなか抜け出せず、そして孤立すると社会から隔絶されているような感覚に陥ります。もしも、自分の部屋がゴミ屋敷になっている、あるいはなってしまいそうで、なんとかしたいと感じている人がいたら、自分でできる次の3つのことを試してみてください。
・環境を変える(引越す)
・物を捨てる
・ときには人を頼る
環境を変える(引越す)
引越しをすれば必然的に物を捨てなければならないため、ゴミ屋敷から抜け出せますが、ゴミが溜まるたびに引っ越しをしていたのでは資金が底を尽きてしまいます。それでは根本的な原因を解決できません。
しかし引越すことには他にメリットがあるのです。
ひとつは、嫌なことから解放されストレスが無くなるというメリットです。もう一つは環境が変わることで考え方が変わったり、新しい出会いが見つかったりして精神面に良い影響を与えます。
心機一転して新しいスタートを切りたいと考えている人におすすめの方法と言えるでしょう。
物を捨てる
物を捨てられないゴミ屋敷の住人にとって、捨てる行為はハードルが高いかもしれません。しかしゴミを捨てるのはごく当り前で基本的なこと。ゴミを捨てないことには何も変わらないのです。
「3年使わないものはこれからも使うことはない」というのはよく言われることですが、思い入れのある物でもいつかは手放すときが来ます。ただし、捨てたからと言って思い出もなくなるわけではありません。
捨てられない人のための捨てるコツや考え方は次の5つです。ゴミを増やさないようにするだけでも十分効果が得られるはずです。
・きれいな部屋をイメージしよう!
・まずはその日出たゴミだけ
・小さい範囲から少しずつ
・3年使っていないものはこれからも使わない!
・ゴミを捨てることを習慣化する
ゴミ屋敷を自力で片づける方法とコツはこちらで解説しています。
ときには人を頼る
ゴミ屋敷になる根本的な原因は、物を片付けられないことです。物が溜まり過ぎたりやる気が出なかったりしたら、信頼する人を頼って手伝ってもらいましょう。他人とのコミュニケーションは孤独感を抑え根本の解決にもつながる可能性があります。
一人で悩まずに、時には人を頼ってみてもいいかもしれません。
実際にゴミ屋敷から抜け出した人の体験談を聞いてみるのもいいでしょう。弊社へ実際にご相談いただいた事例を「実例 ゴミ屋敷清掃で遭遇した孤独を抱えた依頼主」で紹介します。
ゴミ屋敷で孤立化しないために家族ができること
ゴミ屋敷はなにかきっかけが無ければ自分から片づけようと行動を起こすことは困難です。そんな時に家族の協力は欠かせないものです。
ゴミ屋敷になってしまった場合でも、家族の協力によって脱却できたケースがあります。
・根気よくゴミを捨てることの了承を取る
・関係性を維持する
・専門家や業者などに相談する
根気よくゴミを捨てることの了承を取る
ゴミ屋敷になっている人は、物を捨てられない「ためこみ症」を患っている場合があります。家族がそのような状態で、無理に捨てようとすると頑なに捨てることを拒み、怒り出してどうにもこうにもならない、という経験をした人もいるでしょう。
しかし物で溢れた部屋は生活するにも不便が生じます。「使わないものやゴミは捨てよう」と根気よくコミュニケーションを取り続けると、いつしか気持ちが変化して解決へと導くことも。最も大切なのは「根気よく」続けることです。
関係性を維持する
家族といえども、本人に片づける気が無いと支え続けることが負担になってしまいます。時にはイライラしたり、諦めたりもするでしょう。
内閣府「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査」では、セルフネグレクトの約70%の人が家族との関係性が希薄だという結果が出ています。しかし孤立すればするほど、ゴミ屋敷の解決からはかけ離れてしまうのです。
離れていても電話で話すなど、家族の関係を維持することはいつか必ずゴミ屋敷住人の支えになります。最悪の事態を防ぐことにつながるはずです。
専門家や業者などに相談する
生活もままならない、あるいは家族だけではどうにもならない状態に陥っている場合は、専門家や業者に相談するのもひとつの方法です。
不用品回収業者に依頼してゴミを片づければ、家族にとっても安心ですし、専門家に相談することで心身の状態の改善にむかう可能性もあります。
当事者だけで悩んでいる場合は、第三者への相談も検討してみてください。孤立を避けるためには周りが支えてあげることが大切です。
実例 ゴミ屋敷清掃で遭遇した孤独を抱えた依頼主
大阪・京都・奈良でゴミ屋敷清掃のご依頼にお応えする関西クリーンサービスには、様々な悩みを抱えたご相談が多く寄せられます。
ここでは、ゴミ屋敷と孤立の問題を抱えたご依頼を紹介します。今現在も悩んでいる人が変わるきっかけになれば幸いです。
離婚、一人暮らし、近隣からの苦情。最後に頼ったのは…
ご依頼者様は30代の女性でした。ゴミ屋敷に住むのはこの女性ではなく、お母様です。
お母様とは20年以上疎遠だったといいます。幼いころにご両親が離婚し、女性はお父さまに引き取られました。今回、疎遠だったお母様の部屋の清掃することになったのは、ご近所からの苦情でした。
実際に現場へ駆けつけてみると、そこはとても健康的な生活できる状態と言えないほどに衛生面が悪くなっていました。捨てられないままの空き缶や食べかけの食品、そこに集まる大量のハエやゴキブリ。そしてベランダにはハトが巣を作り、階下のベランダにも大量の糞が落ちています。
お母さまが管理人さんから度々苦情を受けるようになると、娘であるご依頼主様へ言ってほしいと電話番号を伝えていたそうです。
女性はそこで初めて、お母さまの家がゴミ屋敷になっていると知ることになります。間接的ですが、お母さまは離れて暮らす娘にSOSを出していたのかもしれません。
もともとお母さまは心の病を抱えていたそうで、そんな状態での長い一人暮らしが、孤独感を増幅させて身の回りのことに手が付けられないセルフネグレクトやゴミ屋敷状態を生みだしたのでしょう。
作業終了後、女性は「これからは母を一人にしないで、時々様子を見に来るようにしたい」と仰っていました。
「ゴミが溜まった部屋を見て嫌な気分になって、その繰り返しで…」
「仕事で疲れて家に帰っても片づける気力が湧かないし、寝るだけでした。
夜勤があるとゴミ出しの時間に間に合わないこともあった。そしたらいつの間にか…」
そう話すのは弊社へご依頼くださった20代の女性です。就職のため、家族がいる地元を離れて1人大阪へ出て来られました。慣れない土地で初めての一人暮らし…大阪での社会人生活は女性にとって大きな負担となったのでしょう。
「いつの間にかゴミが溜まって、ゴミが溜まった部屋を見て嫌な気分になって…その繰り返しで」
この女性のように、環境の変化が負担になるケースもあります。
そして女性は再度、引越しをする決断をしました。しかし今度は一人ではありません。
頼れる人と一緒に、負担が大きかった仕事を辞めて、新たな環境で次の一歩を踏み出素決断をされました。
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【まとめ】ゴミ屋敷問題は他人事ではない。孤立を避けるために対策しよう
ゴミ屋敷は片付けが苦手な方や忙しくて時間が取れない方なども陥る可能性のある問題で、決して他人ごとではありません。
ゴミ屋敷となってしまったら地域住民や人との関りを避けることから孤立化が加速し、最悪の場合孤独死に至るケースも私たちは見てきました。
家族や親戚、身近な人がゴミ屋敷になってしまったり、あるいは自分自信の家がゴミ屋敷だったりして悩んでいる方は、ゴミ屋敷片付けのプロである関西クリーンサービスにご相談ください。