2024.09.02

ゴミ屋敷

【医師監修】ゴミ屋敷とメンタルヘルスの関係性とは？ゴミ屋敷を生む意外な原因

メンタルの不調がゴミ屋敷を引き起こすメカニズムとは
ストレスや疲労からゴミを溜めてしまう
孤独感（孤立感）からゴミ屋敷化へ
ゴミ屋敷の原因となる精神疾患
認知症・若年性認知症
発達障害（ASD／ADHD／LD）
ためこみ症（ホーディング障害）
うつ病
双極性障害（躁うつ病）
統合失調症
ゴミ屋敷化予防のためにできること
ピンポイントなトレーニング
精神疾患の治療
家族や周囲のサポート
ゴミ屋敷住人を放置する危険性
まとめ
大阪・京都・奈良のゴミ屋敷の片付け業者をお探しの方へ
ゴミ屋敷片付けの事例

生活空間がゴミや不用品で埋め尽くされ、悪臭を放つ“ゴミ屋敷”は、深刻な社会問題のひとつとして注目されています。一軒家に住む高齢者から、マンション暮らしの若者まで、幅広い世代に広がりを見せているゴミ屋敷問題。「なぜゴミだらけの中に住めるの？」「どうしてゴミを捨てないんだ」と、疑問に思う人も多いかもしれません。

ゴミを捨てないのではなく、“捨てられない”のだとしたら、あなたはどう感じるでしょうか。

ゴミ屋敷住人になってしまう原因には、メンタルヘルス（※心の健康）が大きく関係していることがほとんどです。この記事では精神科医の監修のもと、メンタルの不調がどのようにゴミ屋敷化を引き起こすのか解説します。

この記事を監修した専門家

精神科医　益田裕介氏

早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。

防衛医大を卒業後、防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院、埼玉県立精神神経などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。一般向けに、わかりやすく、精神科診療について解説するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営している。

この記事の執筆者

関西クリーンサービス　編集部

大阪・京都・奈良を中心に近畿一円でゴミ屋敷片付けや遺品整理、特殊清掃のサービスを提供。遺品整理においては受注件数5年連続関西No.1（※）の実績を誇り、片付けのプロとして日々さまざまなご依頼にお応えしています。

※東京商工リサーチ2019年～2023年「遺品整理業」調査において

メンタルの不調がゴミ屋敷を引き起こすメカニズムとは

環境省が発表した「令和4年度ゴミ屋敷に関する調査報告書」によると、平成30年から令和4年にかけて、全国661の市区町村で計5224件のゴミ屋敷事案が確認されています。

これらのゴミ屋敷は「市民からの通報」や「原因者の親族等からの相談」で発見されていますが、自治体に認知されていないゴミ屋敷も当然のように存在します。

特に若い一人暮らしの方だと、「親や友人に知られたくない」といった理由から自宅の状況を隠す傾向にあり、そういった方からの清掃のご依頼が弊社では絶えません。その中でも目立つのが、「仕事が忙しく片付けをする気力を失ってしまった」というケースです。

ストレスや疲労からゴミを溜めてしまう

仕事のストレスや日々の疲労が積み重なり、部屋を掃除する気力もない。自宅を片付けられない人の多くは、そんな悩みを抱えています。弊社が2022年に実施した「ゴミ屋敷予備軍に関する調査」でも、「片付けができない（できなかった）ことに関して、性格以外で考えられる理由やきっかけを教えてください（複数回答可）」と質問したところ、以下の回答が上位を占めていました。

『ストレス（40.9％）』
『片付けに割く時間がないこと（39.6％）』
『仕事や勉強の負荷が大きいこと（27.5％）』

特に働き盛りの20～30代は、仕事の多忙さと疲労が原因でゴミを溜めてしまう方が多い印象です。ご依頼主さまたちのお話を伺っていると、忙しさから生活が不規則になりゴミ出しの時間に間に合わないことも、ゴミを溜めてしまう原因となっているようです。

関西クリーンサービス

関心を持ってくれたり、生活のサポートをしてくれる人が身近にいないと、自分自身の生活環境への意識が低下しがち。それもゴミ屋敷化の大きな要因だよ

【ゴミ屋敷予備軍に関する調査】まず溜めてしまうのは『ゴミ』ではなく『服』～誰しもがなりうるゴミ屋敷予備軍～

2022.05.09

孤独感（孤立感）からゴミ屋敷化へ

家の内外にゴミを積み上げ、近隣住民や役所の人間が声をかけると怒鳴って追い払う。ゴミ屋敷住人については、そんなイメージを持っている方もいるでしょう。実際には、ゴミ屋敷に住む人の性格は十人十色です。

ところが皆さん共通して、“ひとりで悩みを抱え込んでしまい周りに助けを求められない”という傾向を持っている印象があります。

そこには、「片付け」という誰でもできると思われていることができない恥ずかしさや、ゴミ屋敷になってしまった自宅を見られたくない、人に知られたくない気持ちが関係しています。

ゴミ屋敷化の原因がメンタルの不調や病気・ケガの場合、人に相談できずに自分ひとりで抱え込んでしまう傾向が強くなります。ゴミを溜め込んでいると知られたら人間関係に影響が出るのではと不安になり、周囲の人を頼れないといったケースもあるのです。

そうした“誰にも言えない”という孤独感（孤立感）も、ゴミ屋敷を悪化させる原因となります。

ゴミ屋敷の原因となる精神疾患

ゴミ屋敷の原因となる精神疾患は、主に以下が挙げられます。

認知症・若年性認知症
発達障害
ためこみ症
うつ病
双極性障害
統合失調症

それぞれ詳しく解説していきます。

認知症・若年性認知症

認知機能の低下により、整理整頓やゴミ捨てができなくなります。記憶力と判断力が衰え、ゴミを捨てるタイミングを忘れたり、どれを捨てるべきか判断できなくなるからです。

認知症の発症により収集癖が生じ、不要な物でも「まだ使える」と溜め込んでしまうことも。大事なものを盗まれたと訴える「物盗られ妄想」により、物を執拗に集めたり溜め込んだりしてしまう人もいます。

関西クリーンサービス

認知症の人がゴミに対して「ゴミではない」と言うときは、事実を誤認していたり、恥ずかしくて言えない場合があるよ

発達障害（ASD／ADHD／LD）

発達障害には「注意転導」「過集中」「空間把握能力の低さ」「先延ばしの回避行動」などの特徴があり、それらが片付けられない原因と考えられています。

注意転導

ひとつのことに集中できず、次々と別のことに注意が移ってしまう状態です。これにより片付けの途中で他のことに気を取られ、作業が中断されやすくなります。

過集中

特定のことに過剰に集中しすぎて、他のことに気が回らなくなる状態です。片付けを始めても他の興味のあることに没頭してしまい、作業が進まないことがあります。

空間把握能力の低さ

空間把握能力が低いと、物の位置や配置を正確に認識しづらくなり、片付けをしようと思ってもどこに何を置けばよいか分からなくなります。

先延ばしの回避行動

やるべきことを後回しにして、他の楽しいことを優先してしまう状態です。これにより、片付けや掃除といった面倒なことを避けてしまいます。

また発達障害の種類によっても、片付けが苦手な理由は異なります。

自閉症スペクトラム障害（ASD）

特定の物に対する強いこだわりがあるため、物を捨てることが難しいです。計画を立てて実行する能力が低下しているため、整理整頓が苦手で、物を散らかしてしまいます。

注意欠如・多動性障害（ADHD）

集中力が続かず、片付けを始めても途中で気が散ってしまいます。物を捨てる判断が難しく、不要な物を溜め込んでしまいがちです。

学習障害（LD）

情報を整理し、優先順位をつけるのが苦手な傾向にあります。物を片付ける際にどこから手をつければよいか分からず、結果として物を溜め込みがちです。

関西クリーンサービス

発達障害の人が『ゴミではない』と言うときは、こだわりや心理的な問題が関係しているかもしれないよ。特定の感覚に対して過敏な人も多く、掃除や片付けがストレスになってしまうことも…

ためこみ症（ホーディング障害）

ためこみ症（ホーディング障害）は物を捨てられない心理的な障害です。ため込み症の人はモノに対する執着が強く、不要な物でも「いつか使うかもしれない」と考えて溜め込んでしまいます。モノを手放すことに激しい苦痛（※恐怖感や不安感など）を感じるため、家の中が不用品であふれかえり、ゴミ屋敷状態になります。

【医師監修】ゴミ屋敷の原因となる「ためこみ症」とは？症状と対策を徹底解説

2024.09.02

ゴミ屋敷

うつ病

うつ病の主な症状のひとつに無気力・無関心があります。これにより、何事にも興味や関心が持てなくなり、掃除や片付けをする気力が湧かず、ゴミが溜まってしまう傾向にあります。

また常に疲労感があるため、日常的な家事が困難になり、ゴミ捨てすら大きな負担に感じることも。さらに集中力の低下から、片付けを始めても途中で気が散り、作業が進まないことが多いです。加えて自己管理能力も下がるため、生活のリズムが崩れてゴミの処理が後回しになりがちです。

関西クリーンサービス

うつの症状でエネルギーが低下してしまい、片付けられないんだよ。罪悪感があって落ち込んでいるからこそ、他人の介入に対して「放っておいてくれ」と、申し訳なさと抵抗を示すこともあるよ

双極性障害（躁うつ病）

双極性障害は、躁状態（※気分の過度な高まり）とうつ状態を繰り返す病気です。うつの期間は何もする気力がわかず、片付けや掃除ができなくなります。一方で躁状態のときは、気分が高揚して衝動的な行動が増え、無計画に買い物をしてしまうことがあります。気分の変動が激しいため、片付けや整理整頓の習慣を維持するのが難しく、ゴミ屋敷状態になってしまうのです。

統合失調症

統合失調症には、大きく分けて3つの症状があります。「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」です。

陽性症状

幻覚、妄想、思考障害が起こります。誰かに監視されている・ゴミを漁られるといった妄想から、ゴミを捨てることに対する不安や恐怖を感じ、溜め込んでしまうことがあります。

陰性症状

意欲が低下し感情表現が乏しくなるなど、うつに近い状態です。そのため掃除や片付けに対する関心が持てなくなります。

認知機能障害

記憶力や注意・集中力、判断力の低下を招きます。行動や思考がまとまらず、掃除や片付けを始めても途中で別の行動に移ってしまうことが多いです。

ゴミ屋敷化予防のためにできること

自分自身や身近な人が“ゴミを片付けられない特性”を持っている場合、ゴミ屋敷化を防ぐ手立てはあるのでしょうか。

じつは、メンタルヘルスを理由にゴミを片付けられない人にとって、ゴミ屋敷化を完全に防ぐのは難しいと言われています。ただしトレーニングや周囲の協力により、ゴミ屋敷化を引き延ばすような“改善”は可能です。

ピンポイントなトレーニング

片付け全般が難しい人でも、特定の作業に集中することで改善が見込めます。例えば、“片付けはできないが、お皿洗いだけはできるようにする”といったように、ひとつずつできることを増やしていくトレーニングを行います。

関西クリーンサービス

トレーニングを通じた小さな成功体験の積み重ねによって、全体の片付け能力の向上につながることがあるよ！

精神疾患の治療

片付けられない原因が精神疾患にある場合、その原因を取り除く治療が必要です。適切なカウンセリングや医療機関での治療を受けることで、徐々に片付けの意欲や能力が回復していくでしょう。専門家の指導のもと、本人に合った治療法を見つけることが大切です。

家族や周囲のサポート

発達障害などで、どうしても片付けが苦手な場合は、家族や友人などのサポートが欠かせません。定期的な掃除の手伝いや、片付けを習慣化するためのサポートをすることで、ゴミ屋敷化を防げます。また、プロの片付け業者への依頼もひとつの手段です。

以上の対策は、すべての人に対して正解というわけではなく、個々の状況や特性に応じて異なる方法が必要です。大切なのは、自分や相手にとって最も効果的なアプローチを見つけ、継続的に支援を行う（受ける）ことです。

ゴミ屋敷住人を放置する危険性

うつ病など心の健康問題が悪化すると、「セルフネグレクト」と呼ばれる状態へと進むことがあります。セルフネグレクトとは“自己放任”とも言われ、自分自身のケアを放棄し、生きる気力を失っている状態です。

ゴミ屋敷住人は多くの場合、セルフネグレクトに陥っています。生活環境が悪化した結果、さらなる健康問題や社会的孤立を招いてしまい、孤独死を引き起こすことも珍しくありません。

弊社ではセルフネグレクトを“ゴミ屋敷住人の最悪の状態”と捉えており、当事者が生きる気力を失ってしまう前に防がなければならないと考えています。

まとめ

ゴミ屋敷問題の背後には、単なる片付けの不得手だけでなく、深刻なメンタルヘルスの問題が関係していることが多いです。ストレスや疲労、孤独感といった心身の健康問題、そして認知症や発達障害、うつ病といった精神疾患が原因で、片付けが困難になるのです。また、セルフネグレクトに陥って悪化させないためにも、早期の対応が求められます。治療や家族・友人のサポート、プロの助けが必要です。

ゴミ屋敷問題は、個々の特性や状況に応じた適切な支援を通じて解決の糸口を見つけることができます。早い段階で周りに助けを求める、身近な人の異変に気付いたら手助けするといったことを意識してみてください。

どこに頼ればいいのか分からずに困っている方は、ぜひ関西クリーンサービスへご相談ください。ゴミ屋敷清掃のプロとして問題解決・改善のお手伝いをさせていただきます。