近年では、自分が元気なうちに身辺を整理する「生前整理」を、終活の一環として行う方が増えています。
しかし、生前整理を行おうにも、具体的にどうすればいいのかわからず、二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、生前整理と似た言葉「遺品整理」との違いから、それぞれの特徴、具体的に整理しておくべき物の詳細などについて、詳しく解説していきます。
これから生前整理を行おうか検討している方は、ぜひ参考にしてください。
遺品整理と生前整理の違い
遺品整理と生前整理の違いを簡単に言うと、遺品整理は「故人の所有していたものを片付けること」であり、生前整理は「生きているうちに自分の所有物を片付けること」。
つまり、遺品整理は遺された家族や親族が行い、生前整理は死後を見据えて自分で行うということです。
遺品整理と生前整理は、どちらも不要な物を整理・処分する行為ですが、実際の作業には異なる特徴があります。
以下で詳しく確認していきましょう。
遺品整理の特徴
遺品整理とは、故人が亡くなった後で、住んでいた家や部屋に残された物を整理・処分する作業です。
遺品整理は家族や親族で行うことも多いですが、遺品の物量が多かったり、作業に伴う感情的負担が大きかったりする場合は、遺品整理の専門業者に依頼することもあります。
遺品には故人の生きた証や、遺族にとっての思い出が込もっているものもあり、単なる不用品の処分ではありません。
遺品整理は、故人に敬意をはらい丁重に作業を行うものと考える人が多いでしょう。
また、死後の相続や諸手続きに必要となる遺言書やエンディングノート、預金通帳などの重要書類を探し出す目的もあります。
生前整理の特徴
生前整理とは、本人がまだ生きているうちに、自分の所有物などを整理・処分する作業です。
生前整理は本人自らが行うのが一般的ですが、高齢者などで自力での作業が難しい場合、家族が本人の意志を尊重して行うこともあります。
生前整理では、所有物の処分を自分で決めることができます。
そのため、自分が亡くなった後に遺族へ与える負担を軽減するため、元気なうちに生前整理に取り掛かる人が増えています。
生前整理でしておくべきこと
生前整理で何を整理・処分するかは価値観によって様々ですが、最低限しておくことで、自分の死後に遺族の負担を軽減できるものがいくつかあります。
ここでは、生前整理でしておくべき代表的な3つの作業について、詳しく確認していきましょう。
①財産目録の作成
生前整理をする際は、自分の財産の内容をまとめた目録を作っておくと、死後の相続手続きの負担を軽減できます。
一括りに財産といっても、実際には預貯金や不動産などの資産から、ローンや借金などの負債まで様々なものが含まれます。
財産状況は隠していても死後発覚してしまうので、可能な限り詳細に目録にしておくことが大切です。
また、財産状況の詳細は、日々変わっていくものです。
そのため、一度作ったからと終わりにせず、定期的に内容を更新していくとよいでしょう。
②遺言書・エンディングノートを書く
生前整理をする際、まだ作成していないようであれば、遺言書やエンディングノートも書いておきましょう。
遺言書は法的拘束力を持つ文書なので、自分の死後の財産分配や、諸々の手続きなどに対する指示を具体的に残すことができます。
その一方、エンディングノートは法的拘束力を持たない文書です。
遺言書に比べると内容の重要度は下がりますが、その分気軽に書けるメリットがあります。
遺言書とエンディングノートは、両方用意しておいても問題ありません。
遺言書に記載できる範囲には限りがあるので、家族へのメッセージや遺品の取り扱い方などは、エンディングノートに書いておくとよいでしょう。
③不用品を整理する
死後に家族が遺品整理をする際、不用品の物量が多いと大きな負担になります。
そのため、生きているうちに身辺の物をできるだけ仕分けし、不用品は積極的に処分しておきましょう。
もちろん、中にはどうしても処分する決心がつかない物もあるでしょう。
自分でも決心がつかないのであれば、残された遺族にとっては尚更です。そのため、生きているうちは処分しない物についても、自分の死後どのように扱ってほしいか、エンディングノートに記しておきましょう。
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遺品整理でするべきこと
ここでは、遺族として遺品整理をする際にするべきこととして、代表的な3つの作業の詳細を確認していきましょう。
①遺言書やエンディングノートの有無を確認する
遺品整理でまず行うべきは、遺言書やエンディングノートが残されているかどうかの確認です。
先述の通り、故人が生前整理を進めていた場合は、遺言書には財産分配の指示などの重要事項が記されています。
また、別途エンディングノートがある場合、遺品の扱い方に関する指示や、遺族へのメッセージが記載されている可能性が高いです。
遺言書のうち、「公正証書遺言・秘密証書遺言」が残されている場合は、公証役場に保管されています。
また、「自筆証書遺言」は自宅金庫に保管されていたり、弁護士などの専門家に預けていたりすることが多いです。
また、2020年7月から自筆証書遺言を法務局で保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。この制度を利用していた場合、故人の死後、指定した相続人に通知されます。
エンディングノートの場合は、机の引き出しや本棚、仏壇などの意外なところに収納されていることもあるので、見落としがないようにしっかり確認しておきましょう。
②遺品を仕分けする
遺品整理では、遺品の中から重要書類や貴重品、思い出の品などを仕分けすることも、非常に重要な作業です。
故人が生前整理を進めていた場合は、ある程度身辺が整理されているため、家族だけでも仕分けがスムーズに運ぶでしょう。
しかし、生前整理がされていなかったり、絶対的な物量が多かったりする場合には、相応の手間と時間が必要になるので、遺品整理の専門業者への依頼も検討するとよいでしょう。
③不用品を処分する
遺品整理の結果、不用品と判断された物については、適切な方法で処分を進めましょう。
自治体のゴミとして出すのであれば、各自治体の処理区分に応じて分別を行う必要があります。
遺品整理を業者に依頼している場合は、作業後に不用品は回収してもらえます。
自分で処分してコストを抑えるか、業者に依頼して手間を省くか、ニーズに合った方法を選びましょう。
生前整理を行うメリット・デメリット
最後に、生前整理を行うメリットとデメリットについて、詳しく確認しておきましょう。
メリット①:家族が遺品整理を行う手間を減らせる
生前整理をしておくと、自分の死後に家族が遺品整理を行う手間を減らせます。
もちろん、生前整理をしたからといって、遺品整理の負担を0にすることはできません。
しかし、不用品の数を少しでも減らし、残っている遺品についても遺言書やエンディングノートで指示をしておけば、遺族の物理的・精神的な負担は大きく軽減されるでしょう。
メリット②:死後の相続トラブルなどを避けられる
生前整理で自分の遺産を管理し、適切な遺言書を用意しておけば、自分の死後に遺族間で相続トラブルになるのを防ぐことができます。これが2つ目のメリットです。
相続に関するトラブルは、遺族間での争いに発展し、家族関係を変容させてしまう可能性もあります。
莫大な遺産がある場合だけでなく、遺産が少額の場合、反対に負債が残る場合なども、詳細な指示を遺言書に記しておくことで、無用なトラブルを防げるでしょう。
財産が多くないからトラブルの心配はいらないということはありません。
家庭裁判所の相続に関する相談件数は年々増えており、その1/3は総遺産が1000万円以下なのです。
メリット③:身の回りのものが整理される
生前整理を行うメリットは、遺族だけでなく自分自身にもあります。
生前に身辺を整理しておけば、生活環境が改善し、より充実した暮らしを送ることに繋がります。
生前整理は、自分にとって必要なものを改めて見つめ直すよい機会です。
何が必要で何が不要か、じっくり考えたうえで仕分けをし、整理整頓された空間で心地よく充実した日々を送ることができるでしょう。
デメリット:自力では負担が大きい
以上のように、生前整理には基本的にメリットしかありませんが、強いてデメリットを挙げると、自力では負担が大きい点に注意が必要です。
所有物が多かったり、重量のある家具などがあったりすると、自分1人で動かすのは一苦労です。
怪我をしたり身体を痛めたりする可能性もあるので、絶対に無理をしてはいけません。
そのため、自力での生前整理が難しい場合は、専門業者に依頼するのがおすすめです。
遺品整理を専門としている業者であれば、生前整理の作業も行うことができるので、信頼できる業者と協働で進めるのもよいでしょう。
まとめ
今回は、遺品整理と生前整理の違いや、それぞれで行うべきことなどについて、詳しく確認してきました。
遺品整理が故人の所有物を遺族が片付けることを表す一方、生前整理は自分の所有物を生きているうちに片付けることを表します。
自分の死後に遺族にかかる負担を考えれば、元気なうちに生前整理をある程度進めておくとよいでしょう。
ただし、高齢などで自力での生前整理が難しい場合、無理をしてはいけません。その際は、専門業者に協力してもらうのがおすすめです。
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