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家族が亡くなった際、故人に借金があるなどの理由から、遺産を相続しない「相続放棄」という選択肢を取る方もいます。
しかし、相続放棄をするのであれば、遺品整理には注意が必要です。やみくもに遺品整理に着手してしまうと、相続放棄の手続きを行っても、後にその効力が認められず、結果として、故人のマイナスの遺産を相続せざるを得なくなる可能性があります。
そこで今回は、そもそも相続放棄とは何かという概要から、相続放棄と遺品整理の関係性、遺品整理をする際の注意点などについて、詳しく解説していきます。
これから相続放棄することを前提に遺品整理をしようとしている方は、せっかくの相続放棄の手続きが無駄になって後悔してしまうことのないよう、ぜひ参考にしてください。
この記事を監修した専門家
弁護士 瀧井喜博 氏
一時は司法試験を断念しベンチャー企業に就職したが、その会社がいわゆるブラック企業であったことから、良い職場環境を創出したいとの思いを抱く。また、中、高の友人に、「日本で一番弁護士に向いている。絶対に弁護士になって欲しい。」という趣旨の言葉をもらい、司法試験に再挑戦。平成25年に弁護士となり、平成27年に「瀧井総合法律事務所」を開設。
「依頼者の『困った』を『よかった』に」をスローガンに拡大を続け、平成31年に「弁護士法人A&P」を設立。枠にとらわれず、「感動」を生み出すことができるチームの構築に奔走中。
相続放棄とは?
相続放棄とは、相続人が故人(被相続人)の遺産相続をすべて拒否することを意味します。
遺産と聞くと一般的には土地や資産など、プラスのイメージを持たれることが多いでしょう。しかし、中には借金や負債などのマイナスの遺産が遺されている場合もあります。
遺産を相続する場合、そこにはプラスとマイナス双方の遺産が含まれます。その際、借金などのマイナスの遺産が多い場合、財産を得るどころか、かえって借金などの支払い義務が生じることになります。
そのため、故人が生前借金や負債を抱えていたことが明らかな場合は、相続放棄を選ぶ人が多いのです。
相続放棄以外の選択肢
故人の死後、相続人は相続放棄以外に、「単純承認」と「限定承認」を選べます。
単純承認 | 所有するプラスの遺産だけでなく、借金などのマイナスの遺産などすべての遺産を引き継ぐ。 |
限定承認 | プラスの遺産もマイナスの遺産も引き継ぐが、マイナスの遺産の弁済はプラスの遺産の限度内に留保する。 |
相続放棄 | 一切の遺産を引き継がない。 |
単純承認とは、プラスのものとマイナスのものを合わせ、すべての遺産を相続することを意味します。
一方の限定承認とは、プラスの遺産もマイナスの遺産も相続しますが、マイナスの遺産の弁済はプラスの遺産の限度内にとどめることができる相続です。
単純承認、限定承認、そして相続放棄のいずれの方法を選ぶかは、状況によって異なるので、熟慮のうえで最善のものを選ぶことが大切だといえます。
なお、相続人が相続の開始を知ってから3ヶ月が経過すると、延長手続きを踏んでいない限り、自動的に単純承認となります。そのため、限定承認や相続放棄を検討する際は、原則として、必ず3ヶ月以内に遺産状況を調査し、手続きを済ませなければなりません。
相続放棄をするためには?
相続放棄をするには、相続人が相続の開始を知ってから3ヶ月以内に、故人が最後に住んでいた住所地の家庭裁判所へ申述をする必要があります。
この期間を過ぎると、前述の通り単純承認したとみなされ、その後は相続放棄ができなくなります。
なお、遺産調査が難航しているなど、正当な理由がある場合は、期間伸長の申立てが可能です。この場合も、申立て期限は相続開始後3ヶ月以内なので、いずれにせよ早めの対応が求められます。
遺品整理をすると相続放棄ができない?その理由とは
遺品整理とは、故人の死後に残された品を整理することです。遺品の中には思い出の品だけでなく、現金や貴重品、家屋や土地などの資産価値のあるものも含まれます。
遺品整理を行う際、それら資産価値のあるものを勝手に処分したり持ち帰ったりしてしまうと、遺産を相続したとみなされ、相続放棄ができなくなってしまいます。なお、形見分けとして写真や手紙などを引き取ったり、資産価値のない遺品を処分したりすることは問題ありません。他の相続人と相談のうえで慎重に判断するといいでしょう。
しかし、大量に処分するなどすると、遺産を隠したと判断され、相続放棄の権利が得られない場合もあります。そのため、遺品整理を行う際は、故人に借金や債務がなかったかなどを調査し、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれを選択するかを決めてから取り掛かりましょう。
自分たちでの判断が難しい場合は、弁護士に判断を仰ぐことをおすすめします。
相続放棄をする際の注意点
ここでは、相続放棄をする際の注意点として、代表的なものを2つご紹介します。
注意点①:相続放棄は後から取り消せない
相続放棄は、基本的に一度申述すると、後からは取り消せないので注意が必要です。
たとえば、相続放棄の手続きを終えた後になって、遺品の中に莫大な価値のあるものが見つかったとしても、それを相続することはできません。
一方で、相続放棄の申述が受理される前であれば、申述を取り下げることが可能です。
いずれにせよ、相続放棄をする際は、後になって選択を後悔しないよう、入念に遺産状況の調査を行うことが重要です。
注意点②:遺品の保存義務が残る可能性がある
相続放棄をした場合、他に相続人がいなければ、次の相続人、または相続財産清算人に現に占有する遺品を引き渡すまでの間、“自己の財産におけるのと同一の注意をもって、”その遺品を保存する義務が生じる可能性があります。
それでも次の相続人が決まらない、または相続人全員が相続放棄した場合は、「相続財産清算人( 相続財産管理人)」の選任を申し立てます。相続財産清算人が諸々の手続きによって遺産を整理し、相続人のいない遺産は国庫に帰属されます。
しかし、相続財産清算人の選任時には、所定の手続きに加え、報酬に当てるための予納金として、平均10~100万円程度の金額を用意する必要があります。
予納金を支払わなければ相続財産清算人は選任されないため、相続放棄をしても遺品を保存する義務が生じるケースがあるのです。
なお、遺産の保存義務は2023年4月の民法改正により、「現に占有している場合」のみと明確化されました。例えば、親名義の不動産に同居していた子が相続放棄をし、他に同居人がいない場合などがあげられます。
相続放棄しても遺品整理が求められるケース
広い意味で捉えると、遺品整理は故人の遺産を相続することになるため、相続放棄を選択した場合は、基本的に行う必要がありません。
しかし、状況によっては、相続放棄をしたとしても、遺品整理が必要とされる、または求められる場合もあります。ここでは、具体的な2種類のケースについて、遺品整理のプロ・関西クリーンサービスへご依頼があった実例と併せて確認していきましょう。
ケース①:故人が孤独死した
故人が孤独死した場合は、周囲へ迷惑をかけないために、最低限の清掃が急がれることが多いです。
孤独死では遺体の発見が遅れることが多く、腐敗によって悪臭や害虫が生じ、周辺住民に迷惑がかかりかねません。
相続放棄するからといって現場を放置すると、近隣トラブルに繋がる可能性があるため、早い段階で特殊清掃を含め対応が求められるのです。
[ 実例 ]
1人暮らしだった故人が孤独死し、室内には体液の痕と強い腐敗臭があった。ご遺族は相続放棄を選択したが、臭いや害虫が発生し近隣住人への影響を懸念しておられた。そこで特殊清掃サービスを提供する弊社へ、体液で汚れた遺品と床材を撤去するご依頼があった。
ケース②:賃貸物件の連帯保証人になっていた
連帯保証人とは、借主(故人)が、家賃や、破損や汚損が発生した場合の修繕費用を払えなくなった場合に、借主に代わって責任を負う人のことです。友人や親族がなっているケースが多くあります。
通常、故人が賃貸物件に住んでいた場合、物件オーナーや管理会社は、遺族に遺品整理をし、退去手続きすることを求めます。しかし、求められたからと遺品整理を進めてしまうと単純承認した扱いになり、相続放棄ができなくなる可能性があります。特に、賃貸物件の契約解除や退去の手続きを行うことは、単純承認にあたる可能性が高いので避けた方がよいでしょう。
ただし、賃貸借契約時に自らが連帯保証人になっていた場合は要注意です。その場合、相続放棄するかどうかに関係なく、連帯保証人としての責任は残るため、適切に対応する必要があります。なお、賃貸借契約は連帯保証人が解除することはできないため、他の相続人、または相続財産清算人に引き継がれます。
[ 実例 ]
1人暮らしの故人が部屋で孤独死され、ご遺族は相続放棄を選択したが連帯保証人になっていたため遺品整理のご依頼を承った。室内は特殊清掃が必要な状態。お問い合わせの際に相続放棄した旨を伺い、遺品に資産価値があるものがあるかどうか慎重に確認しながら、見積もりから作業までを終えた。遺品から発見した貴重品などは他の相続人さまへお返しすることとなった。
相続放棄する前提で遺品整理を行うポイント
相続放棄をする場合、資産価値があるものを持ち帰ったり処分したりしなければ、遺品整理が可能だとされています。しかし、整理する品の選定や処分の仕方などで判断を誤ると、単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性もあるので注意が必要です。
ここでは、相続放棄をする前提で遺品整理が求められる場合に注意するポイントを3つ紹介します。
ポイント①:金銭的な価値があるものを形見分けしない
相続放棄をする前提であれば、故人の腕時計や貴金属など、金銭的な価値のあるものは形見分けしないように注意しましょう。
このように金銭的な価値のあるものを勝手に持ち帰ったり売却したりすると、遺品を相続したと考えられ、相続放棄ができなくなります。
しかし、故人の写真や手紙など、金銭的な売却価値のないものであれば、形見分けしても問題ないとされています。
ポイント②:現金や預貯金に手をつけない
相続放棄する場合、故人が残した現金や預貯金には手をつけてはいけません。これらの金銭を持ち帰ったり勝手に使用したりすると、遺産を相続したとみなされて相続放棄できなくなります。
なお、故人に借金があった場合に、故人の預貯金を使って返済した場合も、遺産を相続した扱いとなるので注意しましょう。
ポイント③:遺品整理士の在籍するプロの業者に相談する
慣れない方が自己判断で遺品整理を行うと、誤った判断で遺品を処分したり形見分けしたりしてしまい、相続放棄できなくなるリスクが高まります。
かといって、一般的な不用品回収業者などに依頼すると、重要な遺品もまとめて処分されてしまい、取り返しがつかなくなる可能性もあります。
そのため、相続放棄をする前提で遺品整理を実行するなら、遺品整理士の在籍するプロの業者に依頼するのがおすすめです。遺品整理士は、遺品の取り扱いに関する法的な知識を有しているので、安心して遺品整理を任せられるでしょう。
まとめ
今回は、遺品整理と相続放棄の関係性について確認してきました。
遺品整理を行うと、扱う物品によっては遺品を相続した扱いとなり、相続放棄ができなくなる可能性があります。特に、資産価値のあるものや金銭に手をつけると、高確率で相続放棄ができなくなるので注意しましょう。
とはいえ、何を整理し、何をそのままにしておくべきか、素人目には判断が難しいものです。そのため、相続放棄を前提に遺品整理を行いたいのであれば、遺品整理士などの専門家が在籍する業者に依頼すると安心だといえるでしょう。
関西クリーンサービスでは、弁護士、士業と連携しており、安全・危機管理顧問が在籍しています。そのため、トラブルを未然に防ぐ遺品整理サービスを提供しております。
相続放棄をする前提の遺品整理にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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